Vyondでは手軽にアニメ的な表現ができますが、その使用や公開、譲渡にあたっては、一定の条件があります。法律的なルールなので、のちのち問題にぶつからないように、ルールを守っていきましょう。
自分で作った動画はVyond契約終了後も使える?
使えます。
国内販売代理店をつとめるwebdemoさんによると、
ライセンス所有者が自分の商業利用のためにアニメーション動画を制作して表示する権利を付与します
つまり、有料の価格プランを契約していれば、自分でつくった動画は気兼ねなくYoutubeにアップロードして、万人にみてもらっても大丈夫です。視聴を有料にすることもOKです。
気になるのが、Vyondとの契約を終えた後は、動画を公開できるのかどうかですが、この点についても、
なお、VYONDライセンスが終了した後も、制作物に関する商用利用権は保持されますので、配信等はそのまま継続していただけます
とありますので、問題ありません。継続的なVyondの利用ではなく、「一時的にイベントで宣伝動画が必要になり、そのために契約したけど、その後に解約した」という場合でも、作った動画はずっと使えるわけです。
別の人に、自分の作った動画を販売できる?
できます。
ただし、一定の手数料をVyondを販売している米国のGoanimate社に支払う必要があるので、注意です。
Vyondで動画を制作すると、その動画の商用利用権は製作者のものになります(Vyondの契約後も)が、この動画を誰かに販売するということは、その商用利用権を誰かに譲り渡す、ということになります。この譲り渡すという行為について、「手数料」をGoanimate社に支払わなければなりません。ただで友人に譲り渡したとしても、この手数料はかかります。NPOや教育機関などに社会的な目的のために無償譲渡したとしても同じです。
手数料はひとつの動画について99ドル(≒11000円)かかります。一方、日本の販売代理店のwebdemoさんを通じて支払うと12000円(+消費税)がかかりますので、英語に抵抗がなければ、Goanimate社に直接支払った方が安くできます。
譲渡したあとに再編集して再譲渡した場合は、手数料はかかるのか?
この点は少しややこしいです。
商用利用権を別の人に譲渡・販売しても、90日以内は、そのビデオを自分のVyondで編集できます。その編集したビデオを再度相手に送った場合は、同じビデオの扱いになるので、手数料はかかりません。しかし、90日がすぎると、自分のVyondでそのビデオの編集はできなくなります。そのビデオをコピーして保存しておけば編集自体はできるのですが、その編集したビデオは、もとのビデオとは別物と扱われてしまうので、再度手数料がかかることになります。
おそらく制作したビデオはVyondのなかで、割り振ったURLなどで管理されているのだと推測されます。そのビデオを編集すれば同じURLですが、コピーしたビデオは異なるURLになっているはずなので、そのビデオを譲渡すれば、新たな手数料がかかるわけです。
支払わないとどうなる?
英文の利用規約を日本語訳したwebdemoさんのページによると、13項で
お客様は、GoAnimate社の書面による事前の同意なしに、本契約に基づくお客様の権利の全部または一部を移転または譲渡することはできません。
とあり、10項には「賠償」という項目もあります。同時に、7項では、
お客様が適時に適切な料金を支払わなかった場合、GoAnimate社はVyondプラットフォームまたはVyondプラットフォームの特定の機能へのアクセスを中断または停止することがあります。
とあり、料金の未払いとして、Vyondが使えなくなる可能性も考えられます。手数料の支払いはVyondを提供するGoanimate社の重要なビジネスの柱ですし、それを利用させてもらっている以上、ちゃんと支払いましょう。
所有権はだれのもの?
ここまで商用利用権について説明しましたが、この権利は、所有権とはまた別なので注意が必要です。Vyondは、言ってみれば「パソコン上の紙芝居」のようなものですが、その紙芝居の部品(アセット)としてキャラクターや背景などが用意されています。こうしたアセット、またそれをひとつの作品として制作するためのプラットフォームの権利はGoanimate社のものです。それは、製作者が動画をつくったり、それを誰かにあげたりしても、変わりません。
そうはいっても、自分が制作したビデオの利用権は自分に帰属するので、問題はないと思います。
どうやって申請し、支払うのか?
ここでは、GoAnimate社に直接支払いする方法を解説します。日本の代理店経由で支払う場合は高くなるうえ、代理店経由で使用ライセンスを購入していることが前提のため、直接Goanimate社で使用ライセンスを契約した方は、そもそも日本の代理店に第三者への譲渡について申請できません。
Goanimate社の下記のページに方法が書いてあります。
www.vyond.com
それによると、一番シンプルな方法は下記です。
This is the simplest method. Just contact us at support@vyond.com each time you want to transfer the rights to a video to a third party. A $99 per video fee will apply.
「support@vyond.com にメールする 」とだけです。英文で、誰に譲渡するかなどを説明し、99ドルを何らかの方法で支払うのでしょうが、残念ながら具体的な説明がありません。
また、2番めの方法として、フリーランサーや小規模な事業者向けに、「Production Partner Program」(パートナープログラム)という方法も用意されています。これは月に一定以上を同じクライアントから受注する方を想定したプランなので、外注量が少ないフリーランサーのような方だと、少しハードルが高いプランですが、制作するビデオの長さや本数によってディスカウントが受けられるようになります。この場合もメールで申請するのですが、その宛先は、さきほどとは異なり partners@vyond.com となります。まずは、ここにメールを送信し、支払額を決定する流れだそうです。
(ただ、両方の方法とも詳細なやり方について、具体的な確度の高い情報をネットで見つけられませんでした。そのため、アニメスタディとして現在、両メールアドレスに詳細を問い合わせ中です。回答をもらい次第、内容を更新しますので、お待ち下さい。)
裏技 同じクライアントさんと2本以上動画を制作する場合
実は同じクライアントさんから2本以上の動画を依頼される場合は、簡単な「裏技」で経費を削減できます。
Vyondのプロフェッショナルプランは月額で159ドル(16000~17000円)です。一方、第三者に譲渡するための手数料は99ドル(=11000円)でした。そのため、たとえばクライアントさんが2本の動画を発注したとすると、クリエイターが自分のアカウントで2本の動画を作る場合、99ドル*2本=198ドルの手数料をGoanimate社に支払う必要が生じます。しかし、もし、クライアントさんに自分でVyondのアカウントを1ヶ月だけ作ってもらったらどうでしょうか?クライアントさんの手間はかかりますが、159ドルで済むわけです。
2本だったら大きな違いもありませんが、これが10本とかだと、かなり大きな違いになることは一目瞭然です。
なので、クライアントさんに理解がある場合に限りますが、「クライアントさんにアカウントを作ってもらい、そのアカウントを使ってクリエイターが動画を制作する」のは有効な手段になるのです。
実際の受注相場はいくらなのか?→買い手市場がひどい
このサイトでは、自分で動画をYoutubeで配信するのが当面の目標なので、受注はあまり考えていないのですが、実際にどのような案件があるのか、気になる人は多いと思います。そこで、日本で代表的なクラウドソーシングのサイト「クラウドワークス」で、Vyond案件を探ってみました。
2020年5月時点で、クラウドワークスで「Vyond」で検索すると、なんと635本もの仕事がありました(すでに納期が来ているものも含めて)!
ただ、案件の内容をみると、買い手市場がひどいです。
多くの案件でだいたい共通する特徴がありましたので、列挙してみると、、、
- 動画の長さは数分、長くて10分程度
- シナリオと音声は発注者が用意しており、それに合った動画を作成することが仕事
- アカウントは発注者のものをクリエイターが使う場合と、クリエイター側がアカウントを持っていることを条件とする場合がある
- 単価は数分で7000円とか、長いと1万円とか。アカウントを貸し出す代わりに1本3000円という低価格の発注もあり。
- 発注者がイメージ動画をつけていることも多い。
- コンテンツは書籍の内容紹介や、スカッとする話、怖い話など。「LINE動画」と呼ばれるLINEで会話している風の動画もおおい。
多くの場合、発注者はYoutubeで配信しており、登録者数が数万人というチャンネルもあります。そうしたチャンネル運営者が新規ビデオを制作するために外注しているのが、いまのVyond業界の実態のようです。。。
発注案件では、シナリオがすでに存在し、音声も用意されています。音声はおそらく別の人に外注するか、それは内製化しているんでしょう。音声やシナリオを外注している案件も実際ありました。
そのうえで、「絵」だけを発注するわけです。
しかし、単価があまりに安すぎます。シナリオに合わせていろいろ準備すれば数分の動画でも丸1日かかることもあるでしょう。それだけの時間をかけて、安い場合には3000円しか支払わないというものもありました。
これでは、儲かるのは配信するYoutuberだけになると思います。これではコンビニでアルバイトするのと大きく変わりはありません。
また譲渡手数料もグレーのケースが多いように見受けられました。1本数千円でクリエーターが作って、それをYoutube運営者に譲渡する場合、99ドルをまかなえるはずがないからです。運営側のアカウントで制作すれば譲渡の規約上の問題は回避できますが、発注案件のなかには、クリエーターがアカウントを用意することを条件としている場合もあり、それにもかかわらず譲渡手数料を無視するのであれば、明らかな違反になります。
これからVyondを学ぶのであれば、自分で配信することを最初から想定していくべきだと、個人的には考えています。いくらVyondで手軽にアニメができるようになるからといって、自分が時間をかけて作り出した作品を時給換算で考えて数百円以下にしか買い取ってもらえないようならば、そんな仕事を受ける必要はないと思います。
外注仕事を検討するなら、Youtuberの下請けではなく、自社商品をPRしたい企業様に働きかけるべきでしょう。ただ、その企業もアニメ動画で宣伝することに大きな価値を見出してくれるような会社でないと、厳しいかもしれませんね。